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理事長所信


2019年度
理事長 野並 晃

変えるべきものについて、それを変えるだけの勇気をわれに与えたまえ。
変えてはならないものについて、それを受け入れるだけの包容力を与えたまえ。
変えるべきものと、変えてはならないものを見分ける英知を与えたまえ。

 

【はじめに】
JCIという組織は、あらゆる国籍、民族、宗教、性別の枠を超えた130を超える国と地域の青年から構成される、自らの力で自身の地域を

良くしようという、同じ志を持ったメンバーが日々活動する組織です。
1951年、横浜青年会議所は15名の外国人会員と共に設立されました。横浜青年会議所の設立趣意書には「新しき社会を双肩に担う青年が、同志相寄り相互の啓発と親睦を図り、社会への奉仕を通じ広く全世界の青年と提携し、将来における指導力の涵養に努めんとしここに横浜青年会議所を設立せんとする。」とあります。「全世界の青年と提携し」という文言の通り、我々の活動は、自らの地域に重心を置きながらも、世界中の人たちと共に、一人ひとりが自ら成長を追い求め、積極的な変化を志すことによって、ひとが地域を変え、ひとが世界をより良くしていくことに繋がると解釈をしています。世界をより良くするための起点は自分であり、世界を変えるためには、自分自身が見たいと考える変化に、自分自身がならなければなりません。
我々は何者なのか。我々横浜青年会議所は、発想する集団であります。1951年「創生」から紡ぎだされた横浜青年会議所のストーリーは、2010年代の運動指針を「共感」と定め、「想いをつなげるまち横浜」の実現に向けて日々活動をしています。2010年代に貫かれる「共感」という価値の上に、すべての起点は自分であるという一人称で立ち続ける覚悟を持ち込みたいと考えました。そして、2019年度、私は、「想いをつなげるまち横浜」を「Global City Yokohama」と置き換えます。
一人ひとりが、自分自身の力でこのまちを良くするという想いと、最後までやり切るという本気の覚悟を持った上で、実行すること、アクションを起こすことを「考動」と定義し、一つひとつの「考動」の蓄積によってムーブメントを創り、地域により良い変化を起してまいります。アクションを起こしてはじめて検証が可能となり、新たな知見を得て、より精度の高い戦略や仮説を獲得することができるという観点において、あらゆる課題解決に向けて、すべては実行すること、アクションが起点となるのです。

 

【新しい時代への態度】

今日において、会社は株主のものであり経営は企業価値・株主利益の最大化を目的とするべきであるという株主資本主義が、修正を迫られていることに議論の余地はありません。世界の富の大半を、ほんの数パーセントの人達が保有しているという現状は、詳細な議論を待たずして、直感的に違和感を禁じ得ません。株主の利益のみを優先するのではなく、顧客・取引先・地域社会などのステークホルダー全般への貢献を重視するべきであり、これらに加えて、社会的な共通善に貢献しようという姿勢を重要視することが、持続可能なビジネスをもたらすと考えます。パラダイムが大きく変化しつつある現在において、これからの時代を担う青年経済人の責任として、しなやかな思考を持ち、共感の連鎖を繋げるアクションを起こす必要があります。
社会課題の解決には、2015年9月に国連において持続可能な開発サミットにて掲げられた、持続可能な開発目標(SDGs)を指標としてまいります。17の目標と169のターゲットを設定しているSDGsの特徴は、個々の開発目標から雇用や産業のイノベーションに至るまで、あらゆるセクターとのパートナーシップの構築を促す内容になっています。従来の援助スキームでは充分な成果を得ることができなかった国際開発協力は、ビジネスという新たなアプローチが組み込まれました。これまで、国際機関のみが担当をしてきた国際開発協力の分野にビジネスの手法を導入して課題解決を企図し、「援助よりもビジネスへの投資を」というように概念が変化を迎えています。つまり、企業や市民社会の役割がより重要視された内容になっている点が、SDGsの大きな特徴であります。
私は、すべての事業にSDGsという横糸を通したいと考えます。つまり、すべての事業の構築がSDGsの目標に沿っていて、事業の実施後においては、SDGsの目標を達成するための運動が、その事業を起点として出来上がっているという状態を目指します。これまでどの国も経験のしたことのない少子高齢化という困難や、環境問題に起因する気候変動による災害等々、様々な複雑な課題に直面をして、解決の一つの選択肢はSDGsにあると考えています。設立当初から、まちづくりの中心的な役割を担い、横浜というまちに根差し、向き合い続けてきた我々だからこそ、いままで培った行政や他団体とのリレーションという目に見えない資産を活用して、我々がハブとなってパートナーシップを呼び掛けることで、持続可能な課題解決の仕組みを、このまちに構築できるはずであります。
SDGsの開発目標に沿った、企業経営や課題解決を企図する事業が浸透することによ って、市民や働く人達や会社といった対内的にはシビックプライドの醸成に繋がり、対外的には、横浜というまちの価値を訴求する、共感を繋げる新たなシティープロモーションに資すると確信をします。

 

【課題への解決に向けて結節点となる】

横浜市は既に進行している生産年齢人口の減少に加え、2016年には戦後初めて人口が自然減に転じ、本年をピークに人口減少が始まると予測されています。一方で、都市間競争の加速により、横浜市からの転出者数は東京都部だけでなく、川崎市、相模原市、県央地区、湘南地区への転出増加の状態が続いている現状があります。横浜市の税収構成を考察すると、法人市民税の割合が低く、市税合計の大半を個人市民税が担っていることが分かります。これからの人口減少トレンドを勘案すると、市税合計の大半を担う個人市民税の税収減が、横浜という地域の衰退に直結することが予見されます。この課題の解決への道筋は、観光・MICE・IR構想などをより積極化させることによる定住人口と交流人口の拡大を企図することに帰結します。
横浜青年会議所は、1983年より、横浜経済人会議という事業をスタート致しました。第一回の開催では、みなとみらい21地区の開発について関係する方々と未来都市横浜の目指すべき方向性について様々な議論を展開させて頂きました。みなとみらい21地区の開発においては、年度を跨いで複数年横浜経済会議にてアジェンダし、様々な関係者と議論を重ね提言を実行しました。結果として、横浜JCは、当時の株式会社みなとみらい21という第三セクターに実際に会の資金を投じて、出資者としてみなとみらい21地区の開発に深く関与をしていくことになります。開発の議論において建設が決定付けられたパシフ ィコ横浜には、日本中の青年会議所メンバーが一堂に集う、日本青年会議所主催のサマーコンファレンスという2万人規模の大規模コンベンションを、昨年まで23回の開催をして頂いております。
一方で、なかなか当初の予定通りの開発が進まないなかで、歴史の浅い横浜において地域に根差した賑わいを創出するために、1982年から山下公園にて開催を始めた横浜開港祭という事業を、自らが開発に関わったみなとみらい21地区の存在を広く市民の皆様にPRするために、開催地を1993年から、みなとみらい地区に移しました。昨年で37回目の開催となりました横浜開港祭には75万人の方々にお越しを頂きました。
今では、みなとみらい21地区は、横浜を象徴する地区へと発展を遂げました。そして、みなとみらい21地区は、現在開発の最終段階に入りつつあり、20街区では2020年に完成が予定されている新展示場の建設が始まっています。この新施設はPFI事業におけるBTO方式を取り、正に官民一体となって、新たな横浜という街の可能性への挑戦が始ま っています。
近々の横浜経済人会議では、MICEをよりドライブしていくことが街の活性化の選択肢であると提言をさせて頂いております。その提言に基づき、横浜青年会議所は、世界中のJCメンバーが一堂に集う、2020年JCI世界会議の誘致活動を本格化させ、その開催国として正式に承認を頂きました。
横浜青年会議所を船に例えると、横浜開港祭が船を動かすエンジンであり、横浜経済人会議が船の針路を指し示す羅針盤であると先人達に教えられてきました。
横浜開港祭では、多くの先人達が、様々な規制と対峙しながら、地域に賑わいを創る情熱と行動力を梃子に、民間主導で一つひとつの規制を解除し、今日の市民祭としての姿を確立してまいりました。横浜開港祭は、横浜青年会議所最大の事業であり、横浜市民にとって夏の風物詩と言われるまでになった、多くの方々が集まる機会であるからこそ、横浜青年会議所としても、横浜開港祭を効果的な運動発信の場として位置付け、様々なアクシ ョンを起こしてまいります。横浜開港祭を単なるイベントに終始させることなく、横浜青年会議所だからこそ行うことのできる市民祭へとより深化させることによって、多くの市民と手を携えて、多くの市民の笑顔のために、本年も営々と引き継いできた志を引継ぎ、本来の目的を見失うことなく横浜開港祭を開催させて頂きます。
横浜経済人会議では、既存の思考の枠にはまらない大胆な多くの提言をしてまいりました。この地域に生きる青年経済人の責任として、まちづくりに向き合い、横浜というまちに根差し、そして向き合い続けてきた我々だからこそ、積極的な当事者として、主体的に議論を先導しながら、決して議論に終始することなく具体的なアクションを起こしてまいります。
横浜経済人会議における提言のアクションである、2020年JCI世界会議の構築に向けて、様々な発想を集約し、JCI世界会議のその先に目指すべき地域の姿を規定した上で、いま実行すべきアクションを明確にしてまいります。JCI世界会議を開催することが目的ではなく、手段として、契機として、横浜というまちにより良いムーブメントを創ってまいりたいと考えています。準決勝と決勝を含む7試合が横浜で行われる、ラグビ ーワールドカップ2019、2020年の夏に開催される東京オリンピック・パラリンピ ック、そして、2020年東京オリンピック・パラリンピック後に主管を迎えるJCI世界会議という三点に、一つのストーリーを持ち込みたいと考えます。これらを、交流人口を拡大するための手段を確立する好機と捉え、協働すべきカウンターパートの選択肢を広げながら、社会実験や事業を通じて、知見を得ることで、地域をより良く変える起点と位置づけます。
昨年まで23回の開催を頂いた日本青年会議所主催のサマーコンファレンスでは、日本青年会議所の最大の運動発信に、当事者として携わることのできる貴重な機会を頂いています。サマーコンファレンスを開催させて頂くからこそ、開催地の青年会議所として培うことのできた行政や他団体とのリレーションは、横浜青年会議所にとって目に見えない大きな資産となっています。開港当時、全国各地からこの国を変えたいという意志を持った多くの若者が集い、開港という名の変化を積極的に受け入れ、新たな変化という価値を全国各地へ伝播する起点となった横浜だからこそ、サマーコンファレンスの開催地として選択を頂けているのだと、解釈をしています。これまで23回の開催を頂いた青年会議所として、日本の青年の運動を力強く発信頂くための、最良の伴走者でありたいという考えは不変であります。
横浜という街は、開港当時から、常に民間主導で様々なムーブメントが起こり、街の姿が形成されてきたというカルチャーを持っています。2020年には横浜新市庁舎が完成し、現在の市庁舎エリアを今後どのように活用していくべきなのか。山下ふ頭の開発や、新たな交通の導入等といった都心臨海部再生の動きや、既成市街地・横浜文化体育館再整備・横浜スタジアムと連携した観光・集客の拠点の形成はどう描くべきなのか。横浜という地域が抱える課題への解決に向けて、あらゆるステークホルダーと様々な議論を経ながら、横浜青年会議所が、これから生み出される新たな価値の結節点としての役割を担ってまいります。

【個の確立が起点となる】
近年、人の魅力を語る時、しばしば人間力という言葉を耳にすることがあります。その内容は多岐に分かれますが、自立した一人の人間として力強く生きていく力のことと定義されています。人は生きていく上で、人と接することを避けることはできず、その中にはストレスに感じることや争いごとに発展することも少なくはありません。しかし決して馴れ合いの調和を求めるのではなく、人間同士がぶつかり合いながら切磋琢磨していくことでこそ人間力は養われていくのです。自分が常識と思っていることは、偏見の塊にすぎないということを自覚することから、他者への尊敬が生まれます。協働や協調の前提は、尊敬を持ち合うことです。生きるということは、人のために自分がどう行動するのかということであり、自分のために人を使うことではありません。誰かのためにという、小さな一つひとつの意思が繋がり合う地域が、横浜のあるべき姿だと考えます。
横浜青年会議所は、「頼られる組織」を目指します。頼られるためには、信頼を得ることが必要です。信頼を得ることは、共感を得ることと同義です。横浜青年会議所と繋がったら楽しそうだ、何か良いことがありそうだといった期待感を感じて頂けるように、外部との繋がりを今まで以上に意識し、様々なシーズやヒントを探り進めてまいります。情報は相手に伝わった時、初めて発信となります。実質的な情報伝達ができていないのであれば、青年会議所運動は自己満足の世界でしかなくなり、標榜する変化を創ることはできません。時代に即した情報媒体や効果的な発信手法を考え、他者を巻き込むことのできる広報活動を行わなければなりません。
優れた組織と凡庸な組織との違いは、メンバーが要求された仕事以上のことをしようとする意欲があるかどうかにあると言われます。協調の前提は個の確立であって、各自の主体的な行動の総和が真の協調性を創出します。つまり、優れた組織に求められるものは、表層的な協調性ではなく、自分が動かす覚悟に帰結するのだと解釈しています。

 

【結びに】

成長とは、できなかったことができるようになることであり、今まで見えなかったことが見えるようになることです。同じものを見ても以前の自分とは違った見え方ができることが、成長の証だと考えています。そして、自身を成長させるためには、自身の器に自分自身で水を注ぎ続け、絶えず水を溢れ続けさせる作業が必要です。それは、自分ができるだろうと思うことをやっていても、現時点以上の自分になることはできないということであります。青年会議所という人生の道場において、そこに集う仲間と共に、思考を磨き深め、貪欲に自己成長を追求してまいります。
成功の対義語は何もしないことであり、挑戦しないことを失敗と定義します。人は人生において、何度も挫折を経験しますが、目指している夢が明確であるならば必ず乗り越えることができます。「失敗」をおそれることなく、具体的な挑戦を繰り返す一年間にしてまいります。
2019年は、横浜青年会議所として今まで積み上げてきた志を引き継ぎつつ、2020年JCI世界会議や、2021年横浜青年会議所創立70周年のその先に見据えるムーブメントの起点を創る年度となります。正解のない時代だからこそ、ありたい未来を正確に設定しないと、結局は成り行きの未来に留まってしまいます。ありたい未来とは、考えるだけで楽しくなり力が湧いてくるような未来です。その設定した未来を実現するために、いまをどう生きるのか。過去が未来を創るのではなく、自らが設定した未来から、現在の自分が問われているのだという時間軸を共有して、一人ひとりの「考動」を結集致します。
2019年度のすべての運動に対して、自分事と捉えた「考動」するメンバーが一枚岩となって立ち向かい、「Global City Yokohama」の実現に向けて邁進してまいります。